こども基本法プロジェクト

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こども1万人意識調査10,000 Children's Attitude Survey

※本調査の結果報告においては、2023年4月に「こども家庭庁」が設置され、「こども基本法」が施行となったことを鑑み、原則として固有名詞や法令名等を除き、「こども」表記に統一しております。

はじめに

日本において2023年4月にこども家庭庁が設置され、こども基本法が施行となりました。
日本がこどもにかかわる様々な法律や制度を整備しようとする、その大切なタイミングである同年3月に、広く一般のこどもたちの声をより広く聴き、こども政策にこどもたちの意見を反映すること、また当財団の今後の事業方針の策定に役立てることを目指し、日本財団では全国の10〜18歳の男女1万人を対象に「こども1万人意識調査」を実施しました。

本調査結果の一部を本ページにてご紹介します。
調査結果全体をまとめた調査報告書は下記リンクよりご覧ください。

  • こども1万人意識調査こども向けレポート

    当事者であるこどもたちに届くよう、絵本のように
    気軽に手に取ってページをめくってもらえることを願い、
    作成したレポートはこちら。


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  • こども1万人意識調査報告書(詳細版)

    調査結果の詳細です。




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<「こども向けレポート」作成に対する私たちの思い>
こども1万人意識調査では、調査結果の詳細をまとめた一般的な報告書と別で「こども向けレポート」を作成しました。これは私たち「おとな」が一方的にこどもの意見を受け取って「おとな」に向けて調査報告するだけではなく、当事者であるこども(※1万人の調査参加者を含む)にも調査結果を届けるのが当然の責務だと感じたためです。

それに加え、 おとな目線の「普及啓発」などという堅苦しい言葉は横に置いておいて、何らかのご縁でこども向けレポートを手にしたこどもが、まだ遠い存在かもしれない「こどもの権利」の名称を知る、さらには、その内容に興味を持つきっかけになればと考え、子どもの権利条約及びこども基本法について優しい言葉で解説したコンテンツも含めました。

私たちは、このレポートを1人でも多くのこどもに届けることができればと願っております。
今ここを読んでくださっている方で、こども向けレポートを、こどもたちに届けてくださる方がいらっしゃいましたら、小冊子配布に関するご案内をぜひご参照ください。

小冊子配布に関するご案内はこちら »

調査結果(自分自身について)

  • 自分自身の幸福度 現在どのくらい幸せを感じているかという設問に対して、全体の約8割が「とても幸せ」(23%)または「幸せ」(58%)と回答した。一方で、残り約2割は、「どちらとも言えない」(17%)、「不幸」(1.5%)または「とても不幸」(0.4%)と回答した。
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  • 家庭でこうなったらいいなと思うこと、また、あったらいいと思うサポート 「特になし」という回答が過半数(53%)で最も多いが、次いで「勉強へのプレッシャーをあまりかけないでほしい」が20%、「お金の心配をせずに暮らすための経済的サポート」が16%、「親にもっと自分の話を聞いてほしい」が10%と、様々な観点から希望が示された。
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  • 学校についてもっとこうなったらいいなと思うこと 「学校に所属している人(n=9,835人)」全体を対象とした調査結果では、「特になし」が32%と最も高い結果となったが、「遊びの時間を増やす」(20.1%)と「宿題を減らす」(19.5%)がそれに続き、次いで「もっと将来の役に立つ授業をする」が17%、「先生が生徒の意見を聞いてくれるようになる」が15%となった。 本設問について「学校へ行っているこども(n=9,524人)」と「不登校(n=311人)」に分けた結果は下表の通りで、学校へ行っているか不登校かで、望む傾向の違いがあることがわかった。
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  • 地域で不安・不満に感じる点 「特になし」という回答が過半数(51%)であるが、「夜暗くて歩くのに怖い場所がある」(20%)、「事故にあいそうな怖い場所がある」(16%)、「友達と遊ぶ・勉強する場所がない」(11%)、「公園や遊ぶ場所がない」(10%)といった項目で10%を上回る結果となった。

    なお、「国や社会に望むこと」を尋ねる別設問に対する自由記述回答の中で、聴くことができたこどもたちの地域に関する声(一部)は以下の通り。

    • 私の住んでいる地域は田舎で人口も少なく、あまり地域に活気がありません。友達と会ったり遊んだりする公園や施設もなく、小さい子や高齢者には色々考えているのに、中高生に対してはあまり考えてくれていないように感じます。(14歳)
    • 学童に入ってる人と入ってない人が放課後一緒に遊べない。みんなで遊べるような場所や仕組みがほしい。(11歳)
    • どの地域でも勉強の差が出ないように、どの地域でも図書館は何個とか自然の場所があるとか平等にしてほしいなって思います(12歳)
    • 学校までの道が危険なので整備して欲しい。海が近いのに避難タワーやビルが遠い。避難訓練は何度もあるけど、実際に避難する場所が遠くて心配です。(13歳)

調査結果(こどもの権利について)

  • 「子どもの権利条約」・「こども基本法」の認知状況 子どもの権利条約とこども基本法について「聞いたことがない」と回答した割合が、子どもの権利条約だと約59%、こども基本法だと約62%となった。これはこどもの約6割、つまり、5人に3人が名称も認知していないという結果が示された。
    名称認知者においても、「聞いたことがある」という回答が多くを占め、同条約・同基本法ともに、「くわしく知っている」または「知っている」と回答したこどもは10%に満たなかった。
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  • 「子どもの権利条約」の内容認知状況 子どもの権利条約の名称認知者(「くわしく知っている」・「知っている」・「聞いたことがある」回答者計)に対し、当条約が定める具体的な権利の認知状況を調査した結果、最も認知度が高い(「聞いたことはない」の割合が低い)のは「教育を受ける権利」で、それに「あらゆる暴力から守られる」と「こどもの命が守られ成長できる」が続く結果となった。
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    子どもの権利条約には「一般原則」とされる条文が4つあるが、その「4つの原則」それぞれについて「聞いたことはない」という回答の割合は以下の通り。

    • 「子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)」(聞いたことはない:19.5%)
    • 「子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)」(聞いたことはない:14.1%)
    • 「差別の禁止(差別のないこと)」(聞いたことはない:12.3%)
    • 「生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)」(聞いたことはない:10.4%)

    最も認知度が低いのは「子どもの最善の利益」で、約2割のこどもが認知していない状況が明らかになり、こども自身への認知度向上に向けた取り組みの必要性がうかがえる結果となった。

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  • 守られていない「こどもの権利」 守られていないこどもの権利として、10%超となった回答は「こどもは自分に関することについて、自由に意見をいうことができ、おとなはそれを尊重する(11.9%)」、「こどもはどんな理由でも差別されない(11.3%)」、「こどもは教育を受ける権利がある(10.8%)」、「こどもに関することについては、大人はそのこどもにとって最も良いことを優先する(10.2%)」であった。

    なお、「国や社会に望むこと」を尋ねる別設問に対する自由記述回答の中で、聴くことができたこどもたちの声(一部)は以下の通り。

    • ぼくの小学校ではいじめや不登校などが大きな問題になっています。子どもにかかわる大人たちが今を生きる子どもたちをそんちょうして意見を積極的に聞いて、子どもの権利を保しょうしてほしいと思います(12歳)
    • 大人の事情で子どもの正当な権利が奪われないようにしてほしい(15歳)
    • 親と子供をセットで判断せずに、あくまでも子供もきちんと一人の人間として判断する様にしてほしい(13歳)
  • こどもの権利を守るためにあるとよい仕組み 「こどもにこどもの権利について、もっと学校で教える」が29.5%で最も高く、それに続いて「こどもが困ったことや大人に伝えたいことを、伝えるサポートをしてくれる人がいる」、「困ったときに電話、SNS、メールなどで相談できるところがある」、「おとなたちにこどもの権利についてもっと伝える」といった回答が25%以上という結果が示された。

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    なお、「国や社会に望むこと」を尋ねる別設問に対する自由記述回答の中で、聴くことができたこどもたちの声(一部)は以下の通り。

    • 子どもの権利ってなんだかよく分からないから、権利の基準を教えてほしい(13歳)
    • 子供にはきちんと権利があって、絶対に大人の意見が優先されなくても良いことをもっと学校で教えてほしい(10歳)
    • 子どもにたくさんの権利があるなんて知らなかった。学校やネット、TVで知りたいし教えてほしい(11歳)
    • むずかしいことはよくわからないけど、子どもの意見をとりいれるところがみぢかにあるといいとおもう(10歳)
    • 学校で困っている事を担任の先生以外につたえるところがほしい。先生に嫌だと言えないのがつらい(11歳)
    • 子供が困っている時に親に相談できない内容がある子もいるから親なしで簡単に安全に相談できる所を作って欲しいです(15歳)
    • 1人1人話を直接聞いてくれる時間を作る、言いにくい事も言えるから、病院の先生にも話せる仕組みがいいです(11歳)
    • 子供の権利を守ろうとする大人がいて、制度を作ろうとしてることは分かったけど、そうじゃない大人の方が多くいると思う。今、大人の人、これから大人になる人、色んな大人がいるけど、そうじゃない大人は誰がどうしていくん?(14歳)
    • もっと子供の意見や考えや色々な発想とかを聞いてくれて一緒に考えてくれる場所とかを増やしたらいいと思う。大人も子供をいつまでも小さい子扱いしないでちゃんと話を聞いてバカにしたりしないで聞く必要があると思う。という事を大人にも知らせるようにしたらいいと思う(15歳)
    • 周りの大人が子供の権利を正しく学ぶ(13歳)

調査結果(意見の尊重度について)

  • 親・先生による意見の尊重度 自分のことを決めるときに親・先生が意見を聞き大事扱ってくれると感じるかという問いに対し、「とても大事に扱ってくれる」・「大事に扱ってくれる」を合わせた割合は「親」で88%、「先生」で68%という結果となった。
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  • 親・先生による意見の尊重度と幸福度の関係 親・先生に意見を尊重されていると感じるこどものうち、現在の幸福度について「とても幸せ」・「幸せ」と回答した割合は、それぞれ86%、89%に達した。それと比較し、親・先生に意見を尊重されていないと感じるこどもの幸福度は下がる傾向がみられた。
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調査結果(国や社会に望むこと)

  • 「こども大綱」で取り組んでほしいこと・「こども担当大臣」にお願いしたいこと
    1位 2位 3位 4位 5位
    教育費の無償化 学校教育の内容や規則の見直し こどもの意見の尊重 平等な社会 経済面の支援

    Q.あなたが、「こども大綱」で取り組んでほしいと思うことや「こども担当大臣」にお願いしたいことがあれば、どのようなことでも良いので具体的に教えてください。【自由回答】
    (n=5,412「わからない、特になし」除外ベース)※自由回答をコーディングして選択肢化し定量データとして集計

  • 今や将来の生活を良くするために世の中で変えるべきこと
    1位 2位 3位 4位 5位
    経済面の支援 政治改革 平等な社会 世界平和 思いやりのある社会

    Q.今や将来の生活を良くするために、世の中のどんなことを変えるべきだと思いますか。【自由回答】
    (n=6,905「わからない、特になし」除外ベース)※自由回答をコーディングして選択肢化し定量データとして集計

総括(調査からみえたこと)

本調査ではこども1万人の声をインターネット調査で集めました。

日本財団「こども1万人意識調査」

調査のひとつのキーワードはこどもの幸福度です。どんなこどもたちが自分を幸福と考えているのでしょうか。幸福度と大きな相関があったもののひとつが、こどもの意見を大人が尊重しているかという点です。親が自分の意見をきき大事に扱ってくれると答えたこどもの幸福度は86%だったのに対し、大事に扱ってくれないと答えたこどもの幸福度は33%と大きな差が見られました。学校の先生についても意見を大事に扱っている場合の幸福度は89%、大事に扱ってくれない場合の幸福度は52%と差が大きく、親御さんや学校の先生には、ぜひこどもの話を聞き、その意見を大切にしてあげていただきたいです。

また、不登校や学校に所属していないこどもの幸福度が低い傾向にありました。義務教育だけで不登校のこどもが29万人にのぼる今、こうしたこどもたちが教育を受ける権利をどのように保障していくのか、向き合って考えることが必要です。

身体的満足度や精神的満足度と幸福度の相関としては、精神的満足度が低い方が幸福度が低い結果になりました。家庭・学校・地域の満足度と幸福度の相関としては、家庭の満足度が低いこどもの幸福度が最も低くなりました。予想された結果ではありますが、こどもに対するメンタルヘルスケアの拡充や、子育て家庭への支援の重要性が伺えます。

家庭や学校において不安・不満な点については、家庭では「勉強プレッシャーが大きい」が1位、学校では「宿題が多い」が2位、「勉強プレッシャーが大きい」が3位となり、勉強に関わるプレッシャーを多くのこどもが感じていることが明らかになりました。
また、学校に対する不安・不満のトップは「ランドセル・カバンが重い」でした。文部科学省が2018年に「児童生徒の携行品に係る配慮について」で、身体の健やかな発達に影響が生じかねないとして、いわゆる「置き勉」を認める事務連絡を出しているにもかかわらず、いまだに全ての教科書を持って帰らせる学校が多いといわれるのは残念なことです。ぜひ学校現場でこどもの声を受け止めて欲しいものです。

こども基本法と子どもの権利条約については、どちらもほぼ5人に3人が「聞いたことがない」との回答でした。本調査の実施は 2023年3月で、こども基本法に関しては国会では成立していたものの施行前のタイミングであったことから、事前に考えていたより知っているこどもが多いと感じました。一方で、子どもの権利条約に関しては批准してから30年近く経っているのにもかかわらず、 5人に3人のこどもが聞いたことないと答えているのは残念な結果です。調査の条件が違うため簡単な比較はできませんが、EU が2020年に実施した調査では、EU域内外の95%以上のこどもがこどもの権利について聞いたことがあると回答しています(参照:ChildFund Alliance, Eurochild, Save The Children, UNICEF, World Vision, Our Europe, Our Rights, Our Future,2021)。

また、本調査ではこども大綱で取り組んでほしいことや、国や社会を良くするために取り組んでほしいことを聞きました。こども大綱で取り組んでほしいこととしては、教育費の無償化を求める声が最も多く、こどもたち自身が進学に不安を覚えている様子が浮き彫りになりました。また、学校教育の内容や規則の見直しを求める意見や、いじめへの対策、こどもの意見をきく仕組みをつくってほしい、自分が困ったときに親や学校以外に相談できる場を作ってほしい、などの声が挙げられました。

こども政策やこどもに関わる職業の方々、またできればこどもを育てている親やこどもたち自身にも、ぜひ本調査を、日本のこどもたちが何を感じているのか知っていただくきっかけにしていただければ幸いです。

最後に、本調査に協力くださったこどもたちとその保護者の皆様に心より御礼申し上げます。


※調査の設計と限界
調査は全都道府県でモニターに登録している大人からその子どもに回答を受け渡しと言う形で実施しました。対象の子どもの年齢は10歳から18歳です。どんな調査にも限界はありますが、今回はインターネットにアクセスできる家庭とその子どもに限定されていること、また親から子どもに回答を流す形式のため、比較的親子関係が良好な家庭が多いことが想定されます。また、家庭における虐待、体罰、暴力等に関連する質問は倫理的な観点から実施していません。子ども政策のためには、今後はより弱い立場の子どもの声を多角的に拾うフォーカスグループのインタビューなどを実施することが望ましいと考えられます。